法人独自の取り組み

2020年11月10日 農福連携事業

#農福連携 #110 「幼稚園の先生になりたかった利用者の夢、実現へ」

活動センターに新卒で入ってきたSさんという女性利用者がいる。一般就労もできるような十分力のある方だ。しかし、その方は、重度のてんかんがあり、いつ出るかわからない。加えて薬が効かないというタイプ。

「こどもが大好きだから幼稚園か保育園の先生になりたい」というのが、小さい頃の夢だった。

特別支援学校の2年生の時に、自宅近くの保育園に実習に行った。掃除が中心とはいえ、給食の配膳、下膳、子供たちの遊びの見守りなどをした。このまま保育園で働きたいと思うようになったらしい。しかし、薬の効かないてんかんのため、断念せざるを得なかった。
その時の心情を思うと、心が痛む。

そんな彼女が活動センターに実習に来たのは、3年生の時。たまたま、始まったばかりあかね幼稚園との「たまねぎ定植体験」の場面に参加。そのことが、活動センター利用のきっかけとなった。それから、あかね幼稚園との交流体験が回を重ねることに、私たちも、幼稚園側も気心知れた存在になるなか、彼女も子供たちとの農業体験を人生の楽しみに変えた。

かなわなかった夢が、ちがう形だったけれども、子供たちと頻繁にかかわれる機会が多くなったことで、実現することになった。

最近では、幼稚園の先生たちのほうから、彼女に声がかかり始めた。名前を呼んでもらえるようにまでなっている。あとは、子供たちから呼ばれるようになったら、さぞ彼女はうれしいに違いないし、家族は泣いて喜んでくださるのではないかと思うと、目頭が熱くなる。

ただの交流で、叶わないと思われた夢が実現できたこのエピソードは、農福連携がもつ、魅力の一つだと思う。
農福連携の進めていくと困難なこととともに、素敵な発見も多くでてくるのではないかと思うとわくわくする。

さて、11月5日、あかね幼稚園からお呼ばれして、「お芋祭り」に参加した。利用者5名、職員2名、園児300名、先生30名が園庭に集まり、園児たちはおみこしを担いでいた。我々は、先日、サツマイモ収穫体験でとれた芋をきれいに出荷調整し、プレゼント用に用意した300袋を模擬店のテーブルにならべた。子供たちがお祭り用のチケットを持ってくるというので、こどもたちが自分たちでサツマイモを選んで、利用者が渡すという内容だった。

今まで、圃場で会うことが多かった園児たちと、今度は招かれて幼稚園内で子供たちと関われることは、Sさんのような進路の希望を持つ子たちにとっては、たいへん貴重な時間になったのだろうと思われる。普段の支援員生活では、ひょっとしたら、本人たちの意向を叶えられるのは難しいとか考えがちだが、知恵の絞りようで、Sさんの意向を十分に実現できることがわかってから、我々の仕事は支援を超えたイノベーション(新しい何かを産み出す)に思えてならない。
(写真は、ご本人様の同意を得て、撮影、掲載したものです。)
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