障害のある人の自立と社会参加を促進し、併せてインクルージョン(共生)社会の建設を目指す。

法人概要

2010年度法人概要

2010年度法人概要【PDF:316KB】

法人の目指すもの

目的

障害のある人の自立と社会参加を促進し、合わせてインクルージョン(共生)社会の建設を目指す。

理念

人間尊重、社会貢献、創造と挑戦、共生と和

目標

サービス日本一、職場環境日本一

理事長挨拶

写真:理事長 北原 守

今、日本の障害者福祉は大きく変わろうとしています。障害者の自立志向の強まりの中で、2006年には障害者自立支援法が施行され、地域福祉や就労促進の流れが加速されました。また、身体、知的、精神障害の施策の一元化も図られました。

しかし、同法が障害当事者抜きで一方的に制定されたとの批判や、障害福祉サービスに対する応益負担導入への反発等から廃止を求める運動が起き、2009年秋に発足した新政権の下で廃止が明言されました。現在、3年先までに新しい障がい者総合福祉法をつくるための議論が進められていますが、これまで以上に当事者のための施策になるだろうとの期待がある一方で、財源等の関係から新しい制度を維持、発展させることができるのか、といった懸念も広がっています。

こうした中、育成会では7年にわたる「法人改革」(2003-2009年度)を終え、この4月から「第2次中期経営計画」(2010-2012年度)をスタートさせました。「組織も事業も所詮は人に帰する」との考えから使命感を持った職員づくりを進めることにし、それを実行していくための新しい教育研修計画もつくりました。加えて、これまで以上に利用者が満足できるサービスを提供していくとともに、働き甲斐の持てる法人づくりのために全力で取り組んでいくことにしています。

育成会の目的は、どんなに障害があっても地域で普通に暮らすことができる社会をつくっていくことにあります。そのためには当事者満足の良質なサービスを提供するとともに、差別のない共生社会の構築のために尽くしていかなければなりません。改めて、育成会に課せられた使命を全うしていくことをお誓いし、ご挨拶といたします。

社会福祉法人北九州市手をつなぐ育成会
理事長 北原 守

育成会の目的と理念

育成会の目的は障害のある人たちの自立と社会参加の実現です。そのためには自立を支える各種サービスの提供と合わせ、どんなに障害があっても地域で普通に暮らせる共生社会実現への取り組みが必要です。また、目的達成のための理念は、人間の尊厳を最も大事にする「人間尊重」と共生社会実現のための「社会貢献」、さらには新しいものをつくり出していく「創造と挑戦」です。

法人の理事・監事

第9次役員等一覧

(平成22年4月1日から平成24年3月31日)

(敬称略・順不同)

理事 北原 守 元県議会議員
理事 河原 一雅 弁護士
理事 鬼崎 信好 福岡県立大学人間社会学部 社会福祉学科教授
理事 新原 淳 (社福)北九州市手をつなぐ育成会 西部エリアマネージャー
理事 比舖 進 北九州障害者しごとサポートセンター所長
理事 藤野 武光 (社福)北九州市手をつなぐ育成会 本部事務局長
理事 服部 栄子 北九州市手をつなぐ育成会親の会 副会長
理事 久森 栄子 北九州市手をつなぐ育成会親の会 副会長
理事 藤原 梅幸 (社団) 北九州高齢者福祉事業協会副会長
監事 樋上 弥寿子 税理士
監事 小西 真二 (社福)援助会 聖ヨゼフの園施設長

法人の組織

育成会の組織は、本部と3つのエリア、それに本部直属の障害者しごとサポートセンター、障害者居住サポートセンター、障害福祉研究センターからなっている。このほか、第三者機関として独立した苦情解決委員会も設置している。

このうち、本部はこれまでの総務部を改組して本部事務局とし、人事、財務、情報活動等を通して管理機能を強化するとともに、執行機関の「経営会議」を支え、法人活動の企画・調整に当たることにしている。特に、人事制度における教育研修の充実は今後の育成会の生命線ともいえるもので、万全を期すことが求められている。

エリアは北九州市内7区を東部(門司区、小倉南区)、中部(小倉北区、戸畑区、八幡東区)、西部(八幡西区、若松区)に分けたもので、それぞれが中心拠点として障害者サポートセンターを構えるとともに、その下に東部8ヶ所、中部7ヶ所、西部7ヶ所の施設・事業所を配置している。また、事業所の一つとしてそれぞれにグループホーム・ケアホーム(GH・CH)支援センターを設置しており、その下に東部12ヶ所、中部15ヶ所、西部8ヶ所のGH・CHを有している。 各エリアでは、GH・CHやホームヘルパー活動を拡充して障害者の地域生活支援システムを整備するとともに、利用者の高齢化や重度化に対応できるサービスの提供に取り組んでいくことにしている。また、一般就労への促進と福祉的就労の工賃アップは喫緊の課題であり、育成会独自の事業所の立ち上げも含め、推進していく。

一方、しごとサポートセンターと居住サポートセンターは北九州一円を対象としたもので、一般就労への支援や、住まいを通した地域移行を支援している。このうち、しごとサポートセンターは22年度に全国規模の就労支援セミナーを開催することになっており、成功が期待されている。また、障害福祉研究センターは育成会の付設機関として研究開発事業や国際活動などを推進しており、弁護士や社会福祉の専門家など6人からなる苦情解決委員会は第三者機関として利用者やその家族等の苦情解決に力を発揮している。

法人組織図
組織図

2010年4月1日現在

施設・事業所数 25か所
事業数 60事業
グループホーム・ケアホーム数 35か所

育成会の沿革

1978年 10月 社会福祉法人「北九州市精神薄弱者育成会」が設立され、初代理事長に竹内清治氏が就任しました。
1988年 10月 法人創立10周年の記念式典が行われ、松崎多典氏が第2代理事長に就任しました。
1994年 4月 北原守氏が第3代理事長に就任しました。
2001年 9月 育成会に第三者機関の「苦情解決委員会」がスタートしました。委員に弁護士、社会福祉の専門家、大学教員など7人が就任しました。
2003年 4月 育成会の「法人改革」(2003-2007年度)がスタートしました。「サービス日本一」、「職場環境日本一」を目標に2007年度までの5年間で組織、事業、人事制度、財務制度、職員の意識の5改革を進めることにしました。
2004年 10月 韓国のソウル市立精神遅滞人福祉館(現ソウル市立知的障害者福祉館)と職員の交換研修で協定を結びました。
2005年 5月 法人の最高執行機関として「経営会議」が設置されました。
10月 北九州市に指定管理施設制度が導入され、育成会が受託していた7施設が指定管理施設になりました。12月までに他の6施設も同施設となりました。
2006年 4月 法人組織を改変し、総務部のほか市内を3地域に分けて事業を展開するエリア制を導入しました。
4月 「法人改革」の一環として新人事制度がスタートしました。
5月 ソウルで行われた韓国知的障害者写生大会で育成会の利用者が大賞と金賞に輝きました。
2007年 3月 知的障害者福祉工場の「日明リサイクル工房」と「本城リサイクル工房」がISO14001の認証を取得しました。
4月 「法人改革」を2009年度まで2年間延長し、2007-2009年度を新たに「第1次中期経営計画」と位置づけました。
2008年 4月 育成会の2007年度ホームページの更新数が1000件を突破しました。
1月 「職場環境日本一」の取り組みとして残業縮減計画がスタートしました。
4月 障害者自立支援法による事業移行で、春ケ丘学園と日明、本城両リサイクル 工房が新事業体系に移行しました。
4月 サービスと経営の向上を目指して育成会独自の研究開発事業を創設しました。
7月 中国・大連市の女性職員が育成会の受け入れで初の研修を受けました。
7月 職員が利用者を撮影した第1回「ひまわり写真展」が行われました。
8月 韓国の三育大学生二人が育成会で一ヶ月間の研修を受けました。
10月 法人創立30周年の記念事業を盛大に行いました。
2009年 3月 育成会が福岡県の「子育て応援宣言事業所」で県知事表彰を受賞しました。
3月 全国重度障害者雇用事業所協会が育成会を優良事業所に認証しました。
4月 育成会付設の北九州障害福祉研究センターが開設されました。
4月 育成会と韓国・三育大学社会福祉学部が産学交流協定を締結し、北原理事長が同大で記念講演を行いました。
5月 育成会職員が韓国・三育大学で特別講義を行いました。
7月 第1回育成会研究セミナーを開催しました。韓国・三育大の鄭鍾和(チョン・ジョンファ)社会福祉学部長が特別講演を行いました。
8月 育成会九州大会(北九州市)で初の当事者大会を開催し、日韓の当事者による交流も行われました。
11月 北九州市のワークライフバランス表彰で育成会が市長賞を受賞しました。
2010年 1月 韓国・三育大の金淑熙(キム・スッキ)さんがインターンシップで2ヶ月間の実習を受けました。育成会による初の受け入れ。
2月 北原守理事長が韓国障害者福祉施設協会の総会で「日本における障害者福祉の変化とCEOの役割」をテーマに記念講演しました。
4月 育成会の第2次中期経営計画(2010-2012年度)がスターとしました。

法人の改革(2003-2009年度)

1999年、厚生労働省の研究班が社会福祉基礎構造改革のレポートをまとめました。その具体的な改革の方向は、①個人の自立を基本とし、その選択を尊重した制度の確立、②質の高い福祉サービスの拡充、③地域での生活を総合的に支援するための地域福祉の充実からなっていて、それまでの社会福祉のあり方を大きく変えるものでした。

育成会ではそうした変化を受け、2003年度から2007年度までの5年間にわたる「法人改革」に乗り出しました。目標は「サービス日本一」、「職場環境日本一」で、それを達成するために組織、事業、人事制度、財務制度、職員の意識の5つの改革に着手しました。このうち組織改革は、意思の疎通がよく、しかも経営の時代に対応できる法人づくりを目指すもので、徹底したIT化で情報を共有するとともに、管理機能の強化を図りました。事業改革では、エリア制を導入して地域密着型のサービスを展開するとともに、障害者の就労支援にも力を入れました。また人事制度改革では、考課制度を導入し、考課結果が処遇はもちろん教育研修や福利厚生などにも反映される育成型のトータルシステムをつくりました。財務制度改革では、ITシステムを導入するとともに、事務能力をアップするための体制を強化し、合わせて経営の透明性を確保するため決算情報を公開するようにしました。職員の意識改革では、社会福祉従事者としての使命感を持ち、優れた経営感覚を身に付けた職員の育成に努めました。

2005年、それまでの社会福祉事業法を大幅に見直して社会福祉法が施行されました。また、2006年には障害者自立支援法が施行されました。①身体、知的、精神の3障害一元化、②利用者本位のサービス体系の構築、③地域生活支援と就労支援の強化、⑤支給決定の透明化、などが打ち出され、障害者福祉サービスを2012年3月までに新体系へ移行することになりました。

このため育成会では、2007年度までの「法人改革」を2009年度まで延伸して7年計画とするとともに、2007年度から2009年度までの3年間を「第一次中期経営計画」と銘打ち、「人づくり」と「サービスづくり」に全力を傾けました。また、経営の向上にも努めました。

2010年3月、7年間にわたる「法人改革」に一応のピリオドが打たれました。組織、事業、人事制度、財務制度、職員の意識という広範な改革ではありましたが、全職員上げての挑戦によって所期の目的は達成されました。と同時に、「組織も事業も所詮は人に帰する」との総括から、新たに2010年度から2012年度のまでの「第2次中期経営計画」を策定し、「人づくり」に総力を上げることにしました。

第2次中期経営計画

育成会は平成15年度から21年度まで7年にわたって「法人改革」を進めてきた。新しい時代に対応できる法人をつくるためで、組織、事業、人事制度、財務制度を改革し、職員の意識改革にも努めてきた。

22年度からはそれらをさらに発展させるとともに、「組織も事業も全て人に帰する」との考えから、人づくりを中心とする第2次中期経営計画(22-24年度)をスタートさせた。基本方針は、①使命感あふれる人づくり、②利用者満足のサービスづくり、③自立に向けた法人づくりからなっており、今後3年間でそれらに基づく14の重点事業を進めていくことにしている。特に使命感を持った職員を育成していくには教育研修の拡充と人事制度の改善とが不可欠であり、そのための新教育研修計画も策定した。また、将来の事業展開に備えた財政基盤をつくるため、22年度から26年度までの新財政5ヶ年計画も策定している。

22年度重点事業と予算

第2次中期経営計画の初年度分として以下の重点事業を推進していくことにしている。①使命感あふれる人づくりでは、新教育研修計画に基づく職員研修を遂行するとともに、人事制度の考課システムを見直していく。②利用者満足のサービスづくりでは、地域密着型のサービスを提供するためエリア体制を強化し、利用者の高齢化への対応も含めた地域生活支援システムを拡充する。また、就労支援を拡充するとともに、法人独自の障害者雇用事業所の立ち上げを推進していく。③自立に向けた法人づくりでは、本部の管理機能を強化するとともに、財務基盤、情報活動、危機管理、社会貢献、当事者活動への支援などを充実していく。また、障害者研究センターの機能を強化し、研究開発事業、ナレッジマネジメント、国際活動などを本格化させていくことにしている。

一方、22年度の当初予算は、総収入25億1400万円、総支出は24億7000万円で、収支差額は4400万円となっている。昨年度に比べ1800万円の減額となっているが、理由は21年度に比べて事業収入は若干増えたものの、支出が職員の増員による人件費増や、事務費、事業費のアップなどで増嵩したことなどが上げられる。

法人では、利用率のアップなどによる収入の確保と、事務費等の節減による支出の抑制を行い、健全な財政運営を維持するとともに将来の財政需要に備えた内部留保を図っていくことにしている。

平成22年度 資金収支予算書
法人総括

(単位:千円、%)

項目 平成21年度
当初予算(a)
平成22年度
当初予算(b)
増減 (b)-(a) 前年比増減率
(b)/(a)-100
就労支援 収入 就労支援事業収入 (1) 273,525 271,438 △ 2,087 △ 0.8
支出 就労支援事業支出 (2) 273,525 278,130 4,605 1.7
  就労支援事業活動資金収支差額 (3)=(1)-(2) 0 △ 6,692 △ 6,692 0.0
福祉事業活動による収支 収入 私的契約利用料収入 1,536 618 △ 918 △ 59.8
自立支援費等収入 1,413,069 1,625,507 212,438 15.0
利用料収入 5,397 5,004 △ 393 △ 7.3
介護保険収入 1,080 1,946 866 80.2
経常経費補助金収入 170,758 200,472 29,714 17.4
寄附金収入 600 100 △ 500 △ 83.3
雑収入 38,313 45,338 7,025 18.3
補助事業収入 0 46,959 46,959
受取利息配当金収入 11 6 △ 5 △ 45.5
会計単位繰入金収入※ 0 223,048 223,048
経理区分間繰入金収入※ 265,818 92,126 △ 173,692 △ 65.3
  福祉事業収入計(4) 1,896,582 2,241,124 344,542 18.2
支出 人件費支出 1,061,821 1,187,053 125,232 11.8
事務費支出 258,129 294,413 36,284 14.1
事業費支出 223,097 358,069 134,972 60.5
借入金利息支出 3,900 3,690 △ 210 △ 5.4
会計単位繰入金支出※ 0 223,048 223,048
経理区分間繰入金支出※ 265,818 92,126 △ 173,692 △ 65.3
福祉事業支出計(5) 1,812,765 2,158,399 345,634 19.1
  福祉事業活動資金収支差額(6)=(4)-(5) 83,817 82,725 △ 1,092 △ 1.3
施設整備等による収支 収入 施設整備等補助金収入 2,100 1,760 △ 340 △ 16.2
施設整備等収入計(7) 2,100 1,760 △ 340 △ 16.2
支出 固定資産取得支出 3,743 13,363 9,620 257.0
施設整備等支出計(8) 3,743 13,363 9,620 257.0
  施設整備等資金収支差額(9)=(7)-(8) △ 1,643 △ 11,603 △ 9,960 606.2
財務活動による収支 収入 借入金収入 0 0 0
積立預金取崩収入 0 0 0
財務活動収入計(10) 0 0 0
支出 借入金元金償還金支出 20,000 20,020 20 0.1
積立預金積立支出 0 0 0
財務活動支出計(11) 20,000 20,020 20 0.1
  財務活動資金収支差額(12)=(10)-(11) △ 20,000 △ 20,020 △ 20 0.1
予備費(13) 62,174 44,409 △ 17,765 △ 28.6
当期資金収支差額合計(14)=(3)+(6)+(9)+(12)-(13) 0 0 0 0.0

法人総括の資金収支予算書の会計単位繰入金収入及び経理区分間繰入金収入
※の部分は、法人内部での資金のやりとりで、法人全体の資金収支計算書では、同額になる。

働きやすい職場づくり

育成会は「職場環境日本一」を目指し、働きやすい職場づくりに全力を上げて取り組んできた。

その一つとして労使協調の残業管理委員会を設置するとともに、平成20年1月から残業縮減計画をスタートさせた。各職場で如何にしたら働きやすい職場をつくり、残業が減らせるのか、全員で話し合うとともに、管理委員会が職場を巡回し、問題点や課題について率直な話し合いを進めた。また、毎月の残業状況をweb情報紙「法人ニュース」で提供し、取り組みへの弾みとしてきた。

その一方で、福利厚生面でも改善を行い、育児休業保障への育成会独自の上乗せ、職場復帰後の短時間労働、子の看護休暇や介護休暇に対する有給制などを実施してきた。また、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)についての研修を専門家も招いて実施し、働きやすい職場づくりへの意識を高めていった。

そうした取り組みが功を奏し、サービス残業ゼロはもちろんのこと、残業そのものも確実に減少した。21年度(22年2月までの11ヶ月)の法人全体における職員一人当たり一月の残業時間は7.65時間で、育成会が一応の目安としている月10時間を下回っている。また、21年2月には福岡県知事から「子育て応援宣言事業所」の優良事業所として表彰され、同年11月には北九州市のワーク・ライフ・バランス表彰で市長賞を受賞した。職員からは「職場に信頼関係ができ、働き方も変わってきた」との声も聞かれるようになった。

障害福祉研究センター

サービスにしても経営にしても、これからの社会福祉事業の展開には創造性が求められる。もっといえば、創造性のあるところだけが生き残っていける時代だといっても過言ではない。

そうした時代の流れを踏まえ、育成会は2009年4月に付設機関として「北九州障害福祉研究センター」を開設した。目的は新しい価値あるサービスを開発するとともに、経営の向上を目指すもので、主な業務として、①研究開発事業、②ナレッジマネジメント、③研究セミナー、④国際活動、④広報活動などを推進していくことにしている。

このうち研究開発事業は、2008年度から開始した育成会独自の研究開発事業(1件当たり上限100万円)を職員から募集して推進するもので、チームを編成し、原則一年がかりで進めていくことにしている。また、可能な限り大学や研究機関とも連携し、研究の成果をオーソライズしていくことも必要である。

ナレッジマネジメントの推進は、思いや知識、あるいは経験やノウハウを結集して、より高度な知識資産を創造していこうとする活動で、問題意識を共有する職員がテーマを掲げて「場」をつくり、議論していく。また、その議論に必要なデータバンクも整備しつつあり、具体的な情報の集積作業はこれからとなっている。先の研究開発事業への取り組みは、このナレッジマネジメントの具体的な一つの形態といえなくもない。

研究セミナーの開催は、研究開発事業の成果を発表するとともに、海外の障害福祉事情を報告してもらうもので、2009年の第一回では2件の成果発表と、韓国三育大学・鄭鍾和教授の特別報告を行い、好評を博した。

国際活動の推進は、障害者福祉における国際交流や国際貢献を目指すもので、当面はアジアの時代を意識し、韓国や中国との付き合いを進めている。近い将来はアメリカなどとの交流も考えている。

このうち韓国とは、韓国障害者福祉施設協会をはじめ三育大学やソウル市立知的障害者福祉協会などと交流を進めている。2009年2月、三育大学社会福祉学部と産学交流協定を結び、研修生やインターンシップ生を受け入れるとともに、研究センター研究員による同大での特別講義などを実施した。2010年度は特別講義に変えて双方の実務者による研究交流を行うことを検討している。また、施設協会や福祉協会との交流も10年を超え、友情と信頼の太いパイプで結ばれている。このほか、職員と利用者等で国際活動推進委員会を立ち上げることや、職員向けの英語やハングル講座の開設も準備している。

一方、中国とは江蘇省障害者連合会や大連市障害者連合会との交流を続けているが、今のところは情報交換を中心に行っており、人的交流など本格的な交流はこれからだ。

広報活動では、ホームページでセンターの動きをタイムリーに紹介するとともに、研究誌「研究レポート」(年1回)や広報紙「研究センターNEWS」(年4回)を発行して、市民の理解促進に努めている。

情報活動

育成会では、公益法人としての説明責任を果たす、開かれた法人組織を構築するとの考えから、情報活動(提供、開示、個人情報保護、安全管理)に万全を期している。

このうち情報の提供では、本部、エリア、事業所がそれぞれの広報紙を発行するとともに、ホームページの更新にも力を入れている。エリアによってはDVDで事業紹介を行っているところもある。特にホームページの更新は「正確と迅速」をモットーに取材後3日以内のアップを心がけており、法人全体の年間更新目標を1000件としている。ちなみに19、20年度は目標を若干上回り、21年度は1500件を超えている。一方で、「情報は組織の血液」との考えからグループウエアを使った「法人ニュース」を毎週配信しており、法人内の情報共有化に一役かっている。

情報の開示と個人情報の保護では、個人情報以外は原則開示との考えから、法人情報の提供を積極的に行うとともに、自己情報も本人等からの請求があれば開示することにしている。また、個人情報の保護はそれに関する法令や法人規程を遵守する一方で、最近過度になりがちな保護のあり方については改善を図っていくことにしている。

情報の安全管理では、IT化に伴うセキュリティ対策を強化するとともに、個人情報などの漏洩、逸失対策に万全を期すことにしている。

苦情解決制度

2005年度に施行された社会福祉法によって、社会福祉法人には苦情解決制度を設けることが義務付けられた。育成会ではそれより以前の2001年に第三者機関の苦情解決委員会を設置し、利用者や家族などから苦情や要望を受け付けるようにした。

目的は利用者の人権や権利を擁護するとともに、満足してもらえるサービスを提供することにある。このため利用者にとって利用しやすく、しかも秘密が守られる仕組みとすることが必要で、育成会の場合は各事業所に「意見箱」を設置し、そこに寄せられた苦情や要望が直接、苦情解決委員会に届けられるようにした。また、事業所の責任者に直接届けられるコースもつくった。

解決委員会のメンバーには弁護士をはじめ社会福祉の専門家や家族会の代表などに就任してもらい、公平、公正に対応してもらった。委員会の関係者が苦情を寄せた本人に直接会って内容を確認することを原則に、問題によっては関係の事業所長などを呼び寄せて苦情の解決に当たった。

また、知的障害者の中にはコミュニケーションが不得手で、自らの意思を表すことが困難な人が少なくない。このため委員会の関係者が利用者や家族会の皆さんたちと直接懇談会を開催し、苦情解決制度の啓発を行うとともに、苦情や要望の掘り起こしを行った。日本には多くの社会福祉法人があり、苦情解決制度があるが、育成会のように専門家を含む第三者機関で、しかも懇談会を開催して苦情の掘り起こしに務めているところは余りないと聞いている。

2001年度のスタートから2010年度で10年が経過する。この間、「意見箱」を通して寄せられた苦情や要望は562件、事業所で直接受け付けたのは162件で、合計724件になっている。また、2003年度から開始された懇談会は事業所をはじめグループホーム等でも開催され、利用者や保護者にも大変喜ばれている。育成会では制度開設10周年を迎え、記念行事を行って次の発展につなげていくことにしている。

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